野村克也の流儀
2020年06月24日
久しぶりの投稿となります事務局藤川です。
6月19日に私個人的には念願のプロ野球が開幕しました。コロナの影響で無観客試合での開催とはなったものの、これほどまでに野球を見ることから遠ざかったことはなかったので、ようやく新年度が始まったような感覚です。私はプロ野球のなかった自粛期間中に本でも読もうと思い、何気なく本棚から昔の本を引っ張りだして読みました。当時は全くピンとこなかったが、今見直すと非常に勉強になった本があります。今年2月にご逝去された野村克也氏の「野村ノート」です。野村氏を知らない方に非常に簡潔にどのような人か説明すると、プロ野球で27年間の現役で数々の記録を残された後に引退、その後プロ野球3球団、社会人1球団で監督を務められました。監督退任後も野球評論家、解説者としてメディアに出て野球の面白さ、奥深さを伝える活動をしていました。
「野村ノート」は今から10数年前の本だと思いますが、当時野球しか頭になかった私には理解ができないことが多くあったように記憶しています。ですので当然ほぼ読んでいません。しかし、今の年齢になり改めて読み返すと心に刺さる言葉が多くありましたので少しご紹介させていただきます。
野村氏は「プロ野球選手である前に人間であれ」、「人生と仕事は常に連動しているということを自覚せよ」、「人生論が確立されていないかぎりいい仕事はできないということを肝に銘じておく」といったような、技術はもちろん一人の人間としてどのように成長すべきか、ということを選手に伝えてきました。野村ノートの中には次のような言葉があります。
■監督が選手を一流にするには、「見つける」「育てる」「生かす」と3段階のステップが大事だと考えていて、「見つける」とは、選手個々の素質、才能を見抜いて、適材適所に置いていくこと。“見抜く”ためには選手を見る目、つまり眼力というものが大事になる。そうした逸材を「育てる」には時間がかかる。なぜなら「育てる」とは、「自信を育てる」ことだからです。どういうふうにしたら、選手が自信を持てるのか。「それなら、僕にもやれそうだ」と思わせなくてはならない。自信とは、見通しのことでもある。だから監督は「こういうふうに進みなさい」と見通しを立ててやらねばならない。「生かす」とはその自信をもとに、自分の特徴を生かすこと。
■「信は万物の基を成す」という言葉があります。選手とは、適度な距離を保つ必要があります。それには監督が選手にない経験、実績、専門知識を持つことが前提条件です。ここから「権威」が生まれる。監督の座についた瞬間に「権力」は生じますが、「権力」だけでは人はついてこない。「権威」の上に立った「権力」でなくてはならない。「この監督についていけば大丈夫」と信頼されることが、強い集団を作り上げる第一歩になるわけです。信頼、信用は組織を率いる上で、一番重要な要素だと思っています。
■「人間学のないリーダーに資格なし」。組織は、リーダーの力量以上には育たない。チームが強くなるには、監督が力をつけることが必要でしょう。生涯学習、生涯現役です。
このように野球を通した人間性長の必要性を説く言葉を多く残してこられました。監督時代をリアルタイムで見ていた学生時代の私は、難しいことを言う人だなとしか思っていませんでしたが、組織のリーダーとして自ら常に学び、選手との信頼関係のもとに組織をつくりあげる難しさや重要性に少し気付くことができました。会社に置き換えると監督が経営者で選手が社員。人間尊重のチームづくりといった点では、一見全く関連性のない世界に思えることも、違う視点から見る事が新たな学びになるということを改めて感じました。一度こんな監督の下で野球をしてみたかったなと思います(笑)長文になりましたが最後まで読んでいただきありがとうございました。